フェルメールの作品、9点が来ております。
構成は、最後にフェルメールの部屋と称した、フェルメールの作品を一挙に集めた部屋を設け、それまでの作品は、フェルメールに影響を受けた画家や同時代のオランダの画家たちの作品です。いわゆる「導入」といったところです。
ご参考に、実際の構成は以下のとおりです。
1.オランダ人との出会い:肖像画 2.遠い昔の物語:神話画と宗教画3.戸外の画家たち:風景画 4.命なきものの美:静物画5.日々の生活:風俗画 6.光と影:フェルメール
フェルメールに至るまでのオランダの画家たちの作品もいい作品が多くて、特に個人的には風景画が良かったです。その中でも好きだと思ったのは、シモン・デ・フリーヘルという画家の「海上のニシン船」という作品。グレーからほんのりピンクがかったような淡い色彩の海洋画です。
この時代(17世紀)の画家たちは、戸外で写生をしたものをアトリエに戻って油彩で描くという方法なので、一部想像も混じっています。想像とは思えないほどの細かい波の様子など実際にその場で見ているのではと思うようなリアリティが感じられるものばかりでした。確か、印象派の時代になると、戸外で油彩もできるようになったんですよね。(前に自分が記事にしたものがありました→美術史・印象派)
フェルメールがどうして、他の画家と違った存在として位置づけられているのかという視点で、フェルメールの9つの作品を鑑賞してきました。他の画家の作品でも素晴らしいものはたくさんあります。それでも、フェルメール、フェルメールと騒がれる所以はなんでしょう。
構成が美しいのでしょうか、人の描き方が精密で、美しいのでしょうか。均等美?色彩美?
多くの人々を魅了する、それは何なんでしょうか。
光の描き方?捉え方?観察眼?
人の心を捕らえてしまう神秘にも思えるほどの美?
人は、美を感じると無条件にそれに見入ってしまうのか?
確かに、フェルメールの作品はどれも、細部まで細かく描かれている一方で、単なる精密さとも違い、精密に描かれていないところもあって、しかし、それは人の目には、気にならない、つまり「錯覚」を利用しているもののようです。
これは言葉ではうまく表現できないですね。同じ「光」を描くのなら、他の画家だって他の作品だって秀逸なものはあると思うのですが、でも、確かに、フェルメールには、何か違うものがあって、絵に息を吹き込むというか、そんな気がします。
今回のフェルメール展での最大の見どころはやはり、「牛乳を注ぐ女」だと思います。
よく美術の資料集に出てくる、フェルメールの代表作です。
これは、その牛乳を注いでいる姿が、何か神々しくさえ感じました。
メイドが、牛乳をさらに注いでいる、ただそれだけの様子なのですが、なぜでしょうね、そのメイドの姿が、日常の様子のありのままの姿で、変に虚飾していることもなく、自然な姿なんだけど、やはり心奪われます。
このメイドの女性の丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。それは、彼女へのスポットライトの当て方が、自然の光を使って、巧妙にというか、すばらしく描かれているのだと思います。
私はボキャブラリーが多くないので、これ以上はうまい表現が見つかりません。
「百聞は一見に如かず」
ぜひ、本物をご覧ください。またとない機会だと思います。
私も、幸い、平日にこのフェルメール展に行けてよかったです。
東京展は、来年の2月3日まで開催しております。東京展のあとは、大阪でも開催されるそうです。でも、大阪展では6点なんですね。「牛乳を注ぐ女」は来ないみたいなので、ご注意ください!