リフレッシュの時間

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北斎とジャポニスム展

かなり久々に、美術展に行ってきました。子どもたちと離れてゆっくり美術鑑賞なんて・・・。感謝です。

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北斎ジャポニスム展。現在、国立西洋美術館にて開催中です。

コンセプトは、そのタイトルどおり、葛飾北斎が西洋に与えた影響を、数々の北斎の作品と対比させて西洋画家の作品を鑑賞する、というものです。6つの視点から、北斎の与えた影響を検証しています。

6つの視点というのは、以下のとおり。各視点について私が勝手に独自の解釈でまとめてみました。

1.北斎の浸透 ・・・開国したばかりの日本という異国の紹介として、北斎の絵画を挿絵として大量に使って日本の文化を紹介。
2.北斎と人物 ・・・北斎は一般市民の生活や場面を「北斎漫画」に描き、その自由な発想が、一般民衆を絵に描くということのなかった西洋に大きな衝撃を与えた。
3.北斎と動物 ・・・西洋ではそれまで、何かを暗示するものとして動物を絵画に登場させていたが、北斎は全くそんな意図はなく自由に動物、動物だけでなく、虫やカエル、ムカデや何でも描いていた。その影響で、動物のみを美術品のモチーフに使うという発想が西洋に生まれた。 
4.北斎と植物 ・・・それまで西洋では、植物は花瓶に生けたものしか描かなかったが、北斎は土から生えている植物のありのままの姿を描いていた。モネをはじめ印象派画家などが自然にある植物のみを描くようになった。
5.北斎と風景 ・・・風景は必ず遠近法で描いていた西洋画家たちにとって、北斎の浮世絵の構図は、遠近法を無視した大胆な構図で、木々の間から対象物を描くなど北斎の様々な手法を自分たちの絵画にも取り入れた。
6.北斎と富士 ・・・北斎の「富嶽百景」「富嶽三十六景」など富士山を題材にした連作は、西洋画家たちにとって斬新なもので、あらゆる場所からエッフェル塔を眺めた連作なども登場した。

まず、改めて再認識した点として、印象派が登場する前の西洋美術では、絵画の代表は貴族の肖像画、富の象徴、そして動物はメタファー、植物は「死を忘れるな」という意味など、絵画というものが高貴な人々の権力もしくは宗教的な意味合いが強いものだったということです。
これがのちに印象派の登場するきっかけとなったことは周知の事実です。


そして美術展の作品群を感想は・・・、
見れば見るほど、葛飾北斎の浮世絵の作品の洗練されたこと、完璧な構図、素晴らしい・・・!!
波のデフォルメを取ってみても、北斎の右に出るものはいないのでは、と思うほど。どんなに印象派画家たちの色彩豊かな作品が北斎の作品の隣に並べられても、ますます北斎の作品に魅了されてしまいました。

もちろん、印象派は以前から大好きですし、それはそれで素晴らしい作品です。しかし、それを超越しているように思うのです。

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『サント・ヴィクトール山』
1886-1887年
油彩、キャンバス








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富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二』
1830-1833年
横大判錦絵







ええ、どちらの作品も素晴らしいです。セザンヌも好きです。それでも、北斎の作品を見れば見るほど、目を見張るものがある、感嘆の言葉が自然と出てくるのです。

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富嶽三十六景 東海道程ヶ谷』
1830-1833年
横大判錦絵







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『陽を浴びるポプラ並木』
1891年
油彩、キャンバス
















こちらは、木々を画面に並べて風景を見る、の図です。
モネも大好きな画家です。おそらく、印象派の作品は、もっと感動的な作品はたくさんあるのですが、この美術展に来ている作品が、あくまで北斎と並べることを目的に選ばれた作品なので、比較して北斎の作品を眺めるたびに北斎の秀逸美に感銘を受けることになるのだと思います。


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そして気づいたのが、富士山の存在の大きさです。葛飾北斎ほど、富士山を美しく描いた絵師はいないのかもしれません・・・、が、やはり、富士山はかけがえのない存在だということがわかりました。
西洋画家たちが描くどの山よりも、美しく、こんな山は他に存在しないのではないかと思うほど特徴的な山だと思うのです。裾野がこんなに広がって雄大で、優美で、均整のとれた山はないのではないでしょうか。

その山が、江戸時代には、日本の各地から眺めることができ、老若男女問わず身分の差を問わずすべての日本に住む人々がその姿をいつも眺めることができたのです。人々の心の中に富士山があって、普段の生活の中に、寄り添うかのように見守っているかのように存在していたのだと思います。

その富士山を描いた葛飾北斎
葛飾北斎は、江戸時代のどの流派にも所属していなかったので、生き生きと自由に作品を制作したとのことで、それに西洋画家たちは大きな衝撃を受けたということが今回の美術展の主題ですが、北斎に限らず浮世絵、日本美術は開国と同時に西洋画家に大きなインパクトを残したというのは紛れもない事実なのだと思います。

非常に楽しめた美術展でした。ますます、葛飾北斎、そして、日本美術が好きになりました。
狩野派とか俵屋宗達とか、そのような「流派に属していた絵師」たちの作品もまた見たくなりました。


なお、こちらの美術展、東京以外の地域での巡回はないそうです。
来年1月28日まで開催しておりますので、東京にいらっしゃる機会がある方はぜひ訪れてみてください。