リフレッシュの時間

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美術史・印象派

19世紀に登場した写真は自然をリアルに描く西洋絵画の存在意義を揺るがしました。
しかし、美術界権威の美術アカデミーは新古典主義しか認めようとしません。
自然を客観的に写すだけなら絵画は写真と同じものであり、画家が自然から得た主観的な印象を描くことこそが
絵画の新たな存在意義であると考えたのが印象派の画家たちでした。
 


印象派が登場するきっかけになったのがマネでした。
 
それまで西洋美術史で描かれてきた「裸婦」は、
ヴィーナスなどの神話の女神たちか、浴室などの裸でいても不自然でない女性たちでした。
 
それを、マネが、女性だけが裸の『草上の昼食』を描きました。
この作品は、当時、美術界からは不道徳かつ醜悪と非難を浴びました。
その後マネは、ルネサンス期のティツィアーノの下の作品をもとに、『オランピア』を作成しました。
 
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ウルビーノのヴィーナス』
1538年頃
 
この作品は、ヴィーナスを寝室という世俗的な場面で描いたため、作成時のルネサンス期でも画期的な作品だったそうです。
 
 
 
 
 
 
 
上の絵をもとにマネの描いた『オランピア』↓
 
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 エドゥアール・マネ  『オランピア』  1863年  オルセー美術館蔵 
 
オランピア』も、ルネサンス期名画のヴィーナスを娼婦に置き換えて描いたために、痛烈に非難されました。
 


マネは、このような革新的な試みをしたために、当時の若き前衛画家たちに「改革の師」と仰がれました。
彼ら前衛画家たちは、アカデミー主催の官展(サロン)に対抗し1874年に「無名芸術家協会展」を開催。
そこで、皆さまご存知のとおり印象派という名が生まれるきっかけとなったモネの作品が登場しました。
 
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 クロード・モネ  『印象・日の出』  1872年  パリ・マルモッタン美術館蔵
 
この絵から印象派が始まったということですね。「印象派の日の出」って感じですね。
この絵自体はかなり筆のタッチもラフに描いていて、当時からするとかなり画期的だったんでしょうね。
 
実際、世間からは当時の絵画の完成品に比べると下絵にも劣るものだと酷評されたそうです。
 


当時、美術界で画期的発明だったのは写真のほかに、チューブ入り絵具でした。
チューブ入り絵具は、屋外制作を可能にし、絵画技法を根本から変えました。
これは確かルノワール展でも紹介されていました。
 
油絵具について調べていたら、面白いページを見つけたので載せておきます。
サクラクレパスのHPです。印象派画家たちが主に使っていた絵具の色を画家ごとに紹介しています。
 
印象派は、他に、1867年のパリ万博に出展された日本美術の平面性を取り入れました。
また、絵具を混ぜることで色彩の鮮度が落ちるのを避けるために、鮮やかな色を画面の上にそのまま置き、
見る者の目の中で色を混ぜ合わせるという新しい画期的な方法を生み出しました。
 


印象派画家を定義づけるのは難しいようですが、印象派展に参加したことのある主なメンバーは以下のとおり。
(各回について全ての画家を列挙するのは大変なので、第2回以降は新たに加わった画家を挙げています。)
マネは自分は印象派ではないと頑なに否定し、その後の印象派展にも一度も出展しなかったそうです。
 
第1回印象派展=無名芸術家協会展(1874年)
  ピサロドガシスレーセザンヌモネベルト・モリゾルノワールギヨマン
第2回印象派展(1876年)
  ュスターヴ・カイユボット
第3回印象派展(1877年)
第4回印象派展(1879年)
  メアリー・カサット
第5回印象派展(1880年
  ゴーギャン
第6回印象派展(1881年)、第7回印象派展(1882年)、第8回印象派展(1886年
第8回印象派展を終えて、彼ら印象派画家たちは、それぞれの道を歩んでいくこととなります。
印象派の影響を受けて1880年代に登場した画家たちが、ポスト印象派だそうです。
 


上の画家たちで私の知らない画家が数人います。ギヨマンと、カイユボットとメアリー・カサット。
どんな作品を描いているのか探してみました。
 
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 ジャン=バティスト・アルマン・ギヨマン  『イヴリーの夕暮れ』  1869~1873年  オルセー美術館
 
夕焼けのオレンジ色がとても鮮やかできれいです。
この風景を見て、まず多摩川の川崎辺りの工業地帯の風景が頭に浮かびましたよ。
川崎の工業地域はもっと雰囲気が不気味で怖いですけどね。生きた心地がしない景色です。
でも、見かけるたびにあの不気味な工場群は日本の工業を支えているのだなぁと思います。
パリの人たちにとってみても、工業地域化していく街の様子眺めるのはそれと同じような心境だったのかもしれません。夕暮れともくもくとした黒い煙がマッチしています。
 


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 ギュスターヴ・カイユボット  『床を削る人々』  1875年  オルセー美術館
 
職人技を描いた作品ですね。こんなふうに削ってつるつるにするんですねぇ。
大変な労働作業の場面ですが、かえって強く印象に残りました。
ミレーは農作業の様子を描きましたが、こうした職人の労働を描いた人もいたのですねぇ。
真ん中の人の腕はデフォルメされてますか?ちょっと長い気がします。
 


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 メアリー・カサット  『ル・フィガロを読む』(画家の母の肖像)  1878年  個人所蔵
 
メアリー・カサットの作品を探していたら、母と子を描いた作品が多く出てきたのですが、私はこの作品がもっともいいと思いました。全体的に白を基調としていて、なにかこの女性の几帳面さが伝わってきます。
背景の壁も白に近いです。彼女の服は純白のように見える。高級そうな椅子に座ってるから、この画家は裕福な生まれだったんでしょうね。奥にある鏡もこのお母さんが常にピカピカに磨いていそうです。
そんなお母さんを敬愛する気持ちが伝わってくる感じです。素敵な絵ですね。
 


印象派は、挙げたらきりがありませんね。このあたりにしておきますね。
ところで今、六本木・国立新美術館で「ポスト印象派展」が開催されていますよねぇ。
私は今度の夏に行く予定です。日経新聞ではポスト印象派展について毎週連載していると思ったら、特別版の記事も3ページにわたって載せたりして、かなり力を入れています。
 
なので、次回は、ポスト印象派にしようか象徴主義にしようか悩み中です。ポスト印象派は、新聞ぐらいの情報量は提供できないですし。それにみなさんがご存知のことのほうが多そうですしね。
 
なんにせよ、もうすぐこの美術史は終えることにします。というのも、今読んでいる書籍らが、近世~近代については詳しく書かれているのに、現代については薄いからです。現代絵画についても知りたいんですけどねぇ。