リアリズムというと、例えば顔かたちを見たままその通りに描くそのことを言い、
ルネサンス美術などはまさにリアリズムに含まれますが、
この時代の写実主義の特徴は、庶民側の立場から現実を冷静に描く点にあったことです。
それは、クールベの『レアリスム宣言』に現れています。
彼は、「私はこの目で見たことのない天使は描けない」と言いました。
醜いものや卑猥なものからも目をそらさず、見たままありのままを描くことに意味を見出しました。
その代表作は、こちら。
ギュスターヴ・クールベ 『オルナンの埋葬』 1849年 オルセー美術館蔵
よく美術の資料集などで見かける絵です。無知な私は、
「陰鬱で暗い絵だな、それもそうか『オルナン』という人の葬式なんだから当然だよな」などと思っていました。
この絵は、オルナンという農村での無名の人物の葬式風景を描いたものです。村の名前ですね、オルナンは。
この絵の特徴は黒にあるそうです。確かに作品の半分が黒ですね。
これが葬式の陰鬱とした雰囲気を伝えているわけですが。
19世紀はダークスーツが定着した時代で、男性ファッションは黒を基調として統一されていきました。
黒色は、19世紀初頭のイギリス紳士服で流行し、19世紀半ばに正装としての意味を持つようになったそうです。
私は子どもの時に、美術の資料集でこの作品を見てなぜか心惹かれ、ドーミエという名を覚えました。
オノレ・ドーミエ 『三等車』 1862年 メトロポリタン美術館蔵
この景色はどこにでもありそうで、見ていて、何か安心感があったのかもしれません。
それか昔の一般市民の人が電車に乗っている様子はこんな感じだったのかと思ったのかも。
真ん中のおばあさんみたいな人の表情も穏やかで、好きだったのかもしれません。
とにかく、この絵は見ていて飽きないですし、どこか心惹かれました。
バルビゾン派とは、フランス・バルビゾン村周辺に住んで風景画や農民画を描いた画家たちのことをいいます。
その画家たちとは、主に、
コロー、ミレー、テオドール・ルソー、トロワイヨン、ディアズ、デュプレ、ドービニーの7人です。
コロー、ミレー、テオドール・ルソー、トロワイヨン、ディアズ、デュプレ、ドービニーの7人です。
彼らのうちミレーはそのリーダー的存在で、近代化に反発し、産業革命以前の風景に理想を求めました。
当時、パリなどの都市部では環境悪化が生じていたという事実もあるそうです。
ミレーは、この間のボストン美術館の記事で少しご紹介したから、コローの作品を。
カミーユ・コロー
『モルトフォンテーヌの回想』
自然があふれていますね。
これを当時のパリの人たちは、「空気がおいしそうでいいなぁ」と思ったのでしょうか。
この作品はナポレオン3世が購入したそうです。
私の眼にはコローの風景画はどれも同じように見えてしまっています。
細部まで行き届かない私の目はどうなっているんでしょう。疲れて見えなくなっているのかも。
どの絵も、空も木々も丁寧に描かれていて、きれいにまとまっている感じ。
コローの作品で「いいな」と思える作品がないか探してみました。それで見つけたのがこちら。
カミーユ・コロー
『鎧を着て座る男』
1868-70年頃
風景ではないですが、この男性の堂々とした姿がいいなぁと思いました。鎧をかぶっている人の西洋画でこんなふうにラフな感じで描かれているのは、私はあまり目にしたことがなかったです。
コローの人物画は好きです。
風景画は、森の絵は、緑の生い茂る感じが、鬱蒼としていて、かえってそれが重く見えました。
でも、海や建物を描いている絵は好きかな。
建物を描いている作品ではユニークなのがいくつかありました。
なんにせよ、私にはまだコローの世界は未開の分野です。
しかし、コローの作品には、例えば上の『モルトフォンテーヌの回想』では、「銀灰色を帯びた鈍色に輝く独自の光の表現」などの特徴があり、コローの作品は、構成の美術家に多大な影響を与えたそうです。その影響を受けた画家の名前はそうそうたるもの・・・ピサロ、モネ、セザンヌ、マティス、ドラン、ピカソ、ブラック、グリスなど・・・。
光の描き方でしょうか、構図?風景画だけでなく人物画からも?
私には知識不足でわからないですが、どなたかご存知でしたら教えてください。
次は、やっとですが、印象派にまいります。