リフレッシュの時間

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美術史・新古典主義

いよいよフランス革命が勃発するという頃、享楽的なロココ文化への反省から
ルネサンス期の古典にならい古代理想美を見直そうとする動きが始まっていました。
それが新古典主義です。その名の通り「新しい時代の古典主義」です。
 
ちょうどポンペイ等の遺跡の発掘などで古代ギリシャ・ローマ彫刻などが流行り、
また、ナポレオンのエジプト遠征によるオリエントブームもありました。
 
ナポレオンは、ビジュアル戦略として美術品の制作に熱心で、
自分の姿を古代ローマ皇帝のように描かせたそうです。
 
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 ダヴィッド 『アルプスを越えるナポレオン』 1801年 パリ近郊・マルメゾン美術館蔵
 
世界史の教科書に出てくる彼の姿です。
彼のビジュアル戦略は成功ですね、こうして現在「英雄」として後世に記憶されていますから。
 
確かにこの絵は、ロココみたいな繊細な優しい雰囲気は全く無く、力強く勢いのある絵です。、
多少の誇張はあると思いますが、バロックほどの大げさな感じもありません。
やっぱり、ルネサンスに近いのかな。ルネサンス作品と並べたらどんな違いがあるのでしょうか。
 
ダヴィッドは、他にも、ナポレオンの作品を多数描きました。
 
興味深いのは、ナポレオン帝政支配下のスペインの画家、ゴヤのこの作品。
イメージ 2
 
 フランシスコ・デ・ゴヤ 『1808年5月3日』 1814年 マドリードプラド美術館
 
これは、ナポレオン支配に対して蜂起した民衆の銃殺場面を描いた作品です。
この絵からは、細かくきっちり描いていない分、ゴヤの必死な思いが伝わってくる気がします。
フランスの支配下にあった時に、このような絵を描くのは並々ならぬ勇気が必要だったはず・・・。
 
この作品は、のちに登場するロマン主義の先駆け的な作品だそうです。


新古典主義は、美術界の権威である美術アカデミーの保守本流となり、
19世紀前半に、その代表としてダヴィッドの弟子のアングルが君臨しました。
 
理想美を求めたアングルは、ラファエロの聖母をお手本になめらかな顔立ち、
そして、ギリシャ彫刻のような調和のとれた優美な肉体を描きました。
実際、アングルの描く作品の女性の肌は陶器のよう。人の肌というよりギリシャ彫刻の肌っぽいです。

前にルノワール展で知ったけど、ルノワールがこのアングルの描き方に傾倒したんですよね。

 
そのアングルの代表作。
イメージ 3
 
 ドミニク・アングル 『トルコ風呂』 1862年 ルーヴル美術館
 
ほんと、一番手前の女性の肌の質感がきれいですね。
彼女の左肩に光が当たっていて肩から背中辺りが目立っています。この絵の遠近法おかしくないですか?
 
よ~く見るとこの絵は変なんですって。確かに・・・
新古典主義を頑なに守り、新古典主義以外の描き方に対抗したアングルは、女性の裸体を描くときは、
新古典主義の鉄則である写実性を無視したデフォルメを取り入れ、この絵もマニエリスム化しているそうです。
確かに、一番手前の女性のウエストの位置が高すぎるような気もする。
その右隣の人の上半身と下半身のつなぎ目が不自然です。
 
そんなアングルでしたが、美術アカデミーの権威を盾に、他流を断固拒否したため、
若い画家たちに反発心が起こり、新たな芸術運動が生まれました。
その一つが、ロマン主義です。