リフレッシュの時間

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『ルノワール―伝統と革新』展 -その2-

前回の記事に引き続き、『ルノワール―伝統と革新』展からです。『ルノワール―伝統と革新』公式HP

前回は、この美術展で私が最も面白かった点をご紹介しましたが、
2番目に興味深かった点は、ルノワールの“アングル様式”です。

アングルは、新古典主義の画家です。
美術館などで見かけたことはあったのですが、ほとんど知らない画家です。

ルノワールは、1880年代初めに、自分の印象主義の手法に行き詰まりを感じ、
新古典主義の“アングル”に傾倒していったというのです。

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 『横たわるオダリスク』 ドミニク・アングル 1814年 ルーブル美術館

アングルの画風は、輪郭もしっかり描き、ルネサンス時代の描き方に似ています。
とても印象派とは共通点があるようには思えないです。

ところで、新古典主義とはどういうジャンルなのでしょうか。
 新古典主義とは・・・
 
  それまでのロココ美術があまりに甘美な装飾様式で、絵画等の題材が貴族主義的、退廃的と揶揄され、ギリシア・ローマの古典様式を模範とし、当時なりに解釈し、洗練させた芸術様式が生まれた。形式的な美、写実性を重視しており、その成り立ちから、新古典主義(ネオクラシズム)と呼ばれる。
  ロココ様式の華美で表層的な表現や、イリュージョニズムに熱狂するバロック様式へのアンチテーゼとして、デッサンと形を重視し、理性を通じた普遍的価値の表現を理想とした。(Wikipediaより引用)

ルノワールは、アングルに傾倒し、自らの絵画の手法を模索し始めます。
その同時期に、ルノワールは、アルジェリアやイタリアなど各地に旅に出ています。

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 『アルジェリアの娘』 ルノワール  1881年 油彩/カンヴァス ボストン美術館

この作品は、それまでのルノワール作品と雰囲気や筆のタッチなどが異なる作品でした。
ちょうど模索しているのが現れている作品だと思います。

ちなみに、1880年以前の作品の一つがこちら↓

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 『アンリオ夫人』 ルノワール 1876年頃 油彩/カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー 蔵

この作品もルノワール展で展示されている作品の一つです。
観ていて『アンリオ夫人』のほうが安心感があるけど、同じ画家でも時期によっては全く雰囲気が違うってくるのが面白いですね。『アルジェリアの娘』は、ルノワールについて詳しくない私は、ルノワールだと教えられなければわからなさそうです。でも、アルジェリアの女の子もかわいいですね!

“アングル様式”に傾倒したルノワールは、輪郭をしっかり描いた作品も描いてみるようになりました。
いくつかその作品が展示されていましたが、私がイメージする「ルノワール」の作品とは全く違っていました。

↓こちらの作品は、このルノワール展には来ていませんでしたが、
ルノワールのアングル風作品代表作と言われているようなので載せておきます。

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 『浴女たち』 ルノワール 1887年頃 フィラデルフィア美術館 蔵

アングルの作品と比較してみてみると、確かに裸婦の描き方も似ていますが、
裸婦の下に敷いている布の質感がよく似ていますねぇ。背筋の描き方なども似ています。

そういえば、美術展には『ルーベンス作“神々の会議”の模写』という作品もありました。
これは模写なので、ルーベンスの作品そのままですが、しかし完璧にルーベンス作品というわけではなく、
筆のタッチがルノワールらしいところがあって、色鉛筆で素描したような感じの作品でした。

こうして見ると、ルノワールも悩みながらいろんな画風にチャレンジしていったわけですね。
今回の美術展は、そうしたルノワールの画風の変遷についても学べたので、有意義な美術展でした。
これからはルノワールもきちんと注目していくことにします。

(おわり)