リフレッシュの時間

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『ルノワール―伝統と革新』展 -その1-

国立新美術館で4/5まで開催中の『ルノワール―伝統と革新』展に行ってきました。
『ルノワール―伝統と革新』公式HP

こちらの美術展はルノワールの作品を以下の4つの特徴に分けて紹介したものです。
  第Ⅰ章  ルノワールへの旅
  第Ⅱ章  身体表現
  第Ⅲ章  花と装飾画
  第Ⅳ章  ファッションとロココの伝統

印象派画家の美術展は結構頻繁に開催されていることもあり、そんなに期待せずに行ったのですが、
こちらの美術展、実に勉強になったとともに非常に面白かったです。

色々とご紹介したいところですが、まずは、今回の美術展で私が最も面白かった点。

それは、“緑色”についてです!
緑は、私が小学生の時からずっと、今でも一番好きな色です。

ポーラ美術館所蔵のルノワール作品について、ポーラ美術館協力のもと、赤外線やX線などを通す光学調査で緑色の使い方についての研究がなされ、その研究様子と調査結果を視聴できました。

イメージ 1

  『団扇を持つ若い女』 ルノワール  1879‐80年頃  クラーク美術館 蔵

印象派にとって、明るい色彩を取り入れることのできる緑色は必要不可欠な色とのこと。

緑色には、エメラルドグリーンビリジャンがありました。

エメラルドグリーンは、明るい緑なのですが透明性が低いもの。
(上の作品の右部分に使われている緑がたぶんエメラルドグリーンだと思います。)

ビリジャンは19世紀に作り出された色だそうですが、透明性が高く、鉱物のクロムから作られるそうです。

その光学調査で顔料がクロムなのかどの鉱物なのかなどがわかり、
それにより、使われた“緑”が、エメラルドグリーンなのかビリジャンなのかがわかります。

また、赤外線などを通すことで、下書きを描いてから色がつけられたのかなどもわかります。
絵を描く過程がわかるので、慎重に描かれたものなのか勢いで描かれたものなのかなどもわかります。

ルノワールについては、当初、エメラルドグリーンがよく使われていました。
しかし、エメラルドグリーンは透明性が低く、
ルノワールは徐々に、キャンバス地の色を生かしながら、薄めた色を上に塗り重ねて描く手法を用いるようになったため、透明性が強いビリジャンが好まれ、次第にエメラルドグリーンは使われないようになりました。

このような色・顔料に関する研究の様子や分析内容などは今まで全く知らなかったので、
調査過程・結果などについてわかりやすい解説があり、非常に興味深く、また楽しかったというわけです。

ちなみに、私は、昔絵を描いていた時は、子ども心に『ビリジャン』(私の絵の具には『ビリジアン』と書いてあった)という名前が変なのと、緑は好きな色なのですが、緑の中でもビリジャンの色が好きではありませんでした。
緑の中でも暗いほうの色だったからです。

ルノワールと言えば、優しいピンクのイメージが強かったのに、そのビリジャンが登場し、
上に述べたような過程があってルノワールに頻繁に使われるようになったと知り、なぜかうれしかったです。

その後、どの作品を見ても、必ずどこかに緑が使われていて、
そのたびに「これはビリジャンかな?」などと思いながら見ました。

描きたい絵を描くために、単に自分のイメージに合った色を選ぶというのではなく、
その透明性などのそれぞれ顔料の持つ特性から、どういう色を選べばどう映るかと試行錯誤する作業は、
非常に奥深く、またドラマがあるように感じられ、今まで以上に色の世界に惹きつけられました。

(つづく)