リフレッシュの時間

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“長谷川等伯 展”

東京国立博物館で開催中の長谷川等伯に行ってきました。
3月22日まで開催しています。没後400年特別展長谷川等伯・公式HP

長谷川等伯は、好きな絵師なので楽しみにしていました。
今回の展覧会は、タイトル通り、長谷川等伯だけにスポットを当て、
長谷川等伯の歩みを丁寧に追った展覧会で、非常に充実していました。

展覧会は大きく7つの章に分けられていました。
 第1章 能登の絵仏師・長谷川等伯
 第2章 転機の時―上洛、等伯の誕生―
 第3章 等伯をめぐる人々―肖像画
 第4章 桃山謳歌―金碧画―
 第5章 信仰のあかし―本法寺等伯
 第6章 墨の魔術師―水墨画への傾倒―
 第7章 松林図の世界

長谷川等伯能登の七尾生まれ。“等伯”と名乗る前は“信春”と名乗っていました。
法華信仰の厚い七尾に生まれた“信春”は熱心な日蓮宗信者で、当初は仏絵師として活躍していました。
日蓮宗のお寺にその多くが残されており、この展覧会でも『日蓮上人像』など多くの仏画が展示されていました。
仏画ということもあり、どの作品も非常に緻密に描かれていました。
私が以前観て一目で気に入った作品『萩芒図屏風』のあの細い繊細な線はここから来たのですね。

イメージ 1

  仏涅槃図(重要文化財)  長谷川等伯(信春)筆  1599年  京都・本法寺
本法寺HPより)

能登仏画を描き続けていた“信春”でしたが、33歳になった頃に妻子を連れて京都に上洛します。
そして“等伯”と名乗るようになります。

その頃の京都の主流はあの狩野派等伯狩野派にライバル心を燃やしたのは有名ですよね。

私が好きな『萩芒図屏風』も来ていました。

金箔の図屏風は、どの作品も大きく見事なものでしたが、
私が特に気に入ったのは柳橋水車図屏風』(兵庫・香雪美術館 蔵)です。
画像をアップできず残念です。
柳と橋と水車と川が描かれいるものなのですが、
そのそれぞれが独特で異なるパーツが組み合わされたようでした。
柳の葉の柔らかい細かい丸い深緑の線と対照的に、橋は金一色で豪華に大胆に描かれており、
端にある水車がこれもまた金色で描かれていて、その近くにある物(?)の模様が格子みたいでした。
一方、橋の下を流れる川が、グレーの色で非常に細かい流線が何重にも描かれていました。
とても面白い作品でした。
ポストカードを買ったけど、小さすぎて、細かい線は見られません。
実物は、迫力ある大きい図屏風なのに、目を凝らしてしまうほど細かい繊細な線が描かれています。

妙心寺展で展示期間が限定されていたため観られなかった“枯木猿猴図” 長谷川等伯も来ていました。
今回もまたサルの親子の表情に癒されました(笑)。

長谷川等伯の代表作である『松林図屏風』を今回初めて観ました。

イメージ 2

 松林図屏風(国宝)  長谷川等伯 筆  東京国立博物館
Wikipedia長谷川等伯」より)

さすがに見とれてしまいました。
水墨画はまだまだわからない分野なのですが、この墨を操る描き方の凄さはさすがにわかりました。
「霧は描かれていないのに濃い霧があるのが見える」といった旨の解説がありましたが、本当にその通り。
画像で見るとたいしたことないように見えますが、実物はこの松の木々にもっと堂々とした存在感がありました。
松林の遠くに微かに山がうっすら見えていて、自分が濃霧の松林に迷い込んだようでした。

載せた画像は右隻ですが、左隻をじっくり観察してみました。
木の幹の真ん中を描かずに、幹の根に近い部分と葉に近い部分を薄い墨で、葉を色濃くことで、
幹の存在を観る側に想像させていて、それが同時に霧の存在も想像させていることがよくわかりました。

やっぱり実物を見るに限ります。
今回の展覧会は、長谷川等伯の変遷を知ることができて非常に勉強になった展覧会でした。