リフレッシュの時間

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“ハート・ロッカー”

日比谷・東宝シネマズみゆき座で、話題の“ハート・ロッカー”を観てきました。

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原題:THE HURT LOCKER  製作年度:2008年 製作国:アメリカ 上映時間:131分
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナーアンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズ
    ガイ・ピアースデヴィッド・モース

【作品内容】
2004年イラクに駐屯する米軍のブラボー中隊。爆発物処理班である。
イラクでは、一般市民も住む街中に、多くの爆弾が仕掛けられ、多くの人々が命を失っている。

爆発物処理班は、その仕掛けられた爆発物を、発見してから爆発するまでの限りある時間の中で、敵だか一般市民だかわからない人々が見つめる中その仕掛けの要のコードを切り、爆発を避けなければならない。
仕掛けを解除している最中に、仕掛けた敵がいつそのボタンを押してその爆弾を爆発させるかわからない
という命の危険がある一方、常に冷静さと的確さ、迅速さを要する作業だ。

ブラボー中隊は、班長のトンプソンがその爆発物処理中に亡くなり、
爆発物処理のプロであるジェームズ軍曹(ジェレミー・レナー)が配属された。
ブラボー中隊のサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)は、
処理した爆発物873個という実績を持つこのジェームズの下で、爆発物処理に携わることとなった。

ジェームズは、実績があるものの無鉄砲な人物で、爆発物処理に集中するあまり唯一の通信手段の無線を外すなど、チームワークを無視した行動を取り、命の危険を案じるサンボーンは彼に怒りを露わにすることもたびたび。彼らは仲間割れをしながらも、共に危険を乗り越え、着実に爆発物を処理していく。



【感想】
戦場の緊迫感、リアルな光景の映し方が見事だった。

特に、砂漠でのイスラムのテロ部隊とブラボー中隊の800mの銃撃戦の心理戦はかなり見ごたえがあった。
スナイパーのジェームズとサンボーンの、精神的に極度に緊張した状態が長時間にわたり、
一方で後ろ側を守るエルドリッジも背後遠くに、牛の群れと不審な人物を確認し、一人でその対応を任される。
印象的な場面が多い中で、特にこの場面が最も鮮明に印象に残った。

作品としては、主人公のジェームズを中心に、その爆発物処理の手際の良さや、極限状態の仲間を労わる
人間的な優しさを持ち合わせた姿、また、仲間を死に直面させた自分を責め精神的に追いつめられる状況などが描かれている。同時に、周りの彼への思いなども描かれていて興味深かった。

全体的には、戦場ならではの緊迫した状態が続き、かなりのスリルがあった作品だった。
怖がりの私には非常にキツイ映画で自分が戦場にいるような怖い経験を味わったが、観てよかったと思う。
それは、戦場という命を懸けた極限状態を見せつけられたからです。
また、人間爆弾などという恐ろしいものも見せつけられました。人間はどこまで残酷になれるんでしょうか。

イスラム側の爆発物設置とその爆発物処理は、不毛な争いであるが、絶えることなく続いている。
ばかばかしいことだがこれが現実であり、この無意味な争いに何人もの兵士や一般市民が命を落としている。
色々と考えさせられました。



このブラボー中隊の3人のうち、エルドリッジの心理に最も共感しました。
彼は、まだ年も若くて、自分の周りの人々が簡単に死んでいくのを目の当たりにしながら、
すでに抱いていた死への恐怖をさらに加速させていきます。

もし自分が戦場に行くことになったら、間違いなくエルドリッジの精神状態になると思う。
仲間一人一人が死ぬことに耐えられず割り切れず、精神不安定に陥り常に不安に駆られると思う。
映画鑑賞中、その彼の不安に感情移入にして涙さえ出てきました。
とても他のメンバーのジェームズやサンボーンのようなタフな精神にはなれません。

だからエルドリッジが脚を銃で撃たれて戦場から去ることを余儀なくされた時、心から「良かった」と思いました。
彼の精神状態ではとてもこのまま継続して戦場にいることは危険すぎるし、
負傷して安心できる場所に移動できることが彼には最善だと思えたからです。



この映画は、戦場の過酷さと登場人物の精神状態を非常にリアルに描いた作品で良く出来ていました。

明日アカデミー賞授賞式がありますが、この映画が作品賞を獲るんじゃないかなぁ。
“アバター”も観たけど、あくまで個人的な感想ですが、作品の出来の次元が違うように感じました。

本当にこの世界から戦争がなくなってほしいと切実に思いました。