リフレッシュの時間

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“ヴィルヘルム・ハンマースホイ展”―国立西洋美術館―

国立西洋美術館で開催されているヴィルヘルム・ハンマースホイ展に行ってきました。

ハンマースホイという画家、初めて知ったのですが、19世紀末のデンマークの画家です。

全体的にどの作品も、色使いは、グレー、灰色です。
描いている対象も、建築物、人通りのない通り、部屋の中、部屋の中にいる人・・・といったものです。

宣伝で「静かなる詩情」とうたい文句がつけられていましたが、なるほどその通りです。
描かれているのは、静寂です。人物画も、まるで静物画のように描かれています。
描かれる人物は生気を失ったかのよう。
確かにそこにあるのは静寂かもしれませんが、同時に生命感はありません。
木々を描いても、木々も生命感を奪われ、「絵」にしか過ぎないのです。
無機質なのです。一切の不純物がないかのようです。

そして、どの絵も荒涼とした寂しさを漂わせています。それは、色と筆のタッチのせいかなぁ。

イメージ 1

“室内ストランゲーゼ30番地”(1901年)

どれも緻密な筆遣いで、写真を撮ってからその写真を見ながら描いたという作品もあったようで、
その緻密さは写真とにらめっこしたから描くことができたのかなぁというものもありました。

どの作品にも言えるのは、計算しつくされたかのようなまっすぐな線と、それによる整頓された統一感。
一切の乱れはありません。
人間として持っている、心の乱れや喜怒哀楽、心の動きはどこに行ったのでしょう。
しかし、その整然としていることの美しさを、この画家は愛したということでしょう。

個人的に気に入ったのはこの作品。
イメージ 2

“居間に射す陽光Ⅲ”(1903年 ストックホルム国立美術館蔵)
光の入り具合と、ソファの均整の取れたフォルム、
それから、その射し込む光が肖像画を照らしていないところが気に入りました。

同じような絵画ばかり(部屋の中を描いた作品が多い)ですので、
展覧会の最後のほうになると、自分がグレーの無機質な部屋の絵ばかりに囲まれて、
敏感な人は、その絵画の整然さとは裏腹にかえって落ち着かなく息苦しくなるかもしれませんのでご注意ください。