浮世絵は、以前に東京国立博物館で数枚見たことがありましたが、日本に残っている浮世絵は少なく、これほど多くの浮世絵を見たのは初めてでした。実に144点!このチラシの裏にも書いてありましたが、作品のほとんどがボストン美術館に収蔵されて以来初めての里帰りだそうです。
この美術展で出展されていた浮世絵は、基本的に、風俗画、歌舞伎役者の似顔絵や舞台の場面を描いたもの、そして美人画が多かったです。この「錦絵の黄金時代」がそういう浮世絵の制作が主流だったのかな。北斎の富嶽三十六景のような風景画はあまりありませんでした。あったとしたら、隅田川の桜を観賞する人々の様子として背景に描かれているとか、その程度だったと思います。
でも、その風俗画や歌舞伎の舞台、歌舞伎役者の作品が、どれもユーモアに富んでいるように感じられて、非常に面白かったです。役者はデフォルメが面白いし、風俗画は、そこに描かれている子どもたちの様子や、映画「千と千尋の神隠し」に出てきそうな化け物のような福禄寿など、他にも色々、見ているだけでワクワクしてくるものばかりでした。
鳥居清長
天明3(1783)年7月 大判錦絵
これは歌舞伎の『義経千本桜』の一場面です。
登場人物の着物の模様も細かく彩られていて、発色もよかったです。
この場面がどんな場面が分かったらもっと面白いんだろうな。
歌舞伎や浄瑠璃はまさに浮世絵の題材ですよね~。
当時の人々は、こんな浮世絵を見て、その歌舞伎の上演を楽しみにしていたり、もしくは一度見た上演を振り返っていたりしたのでしょうね!
『中山富三郎の宮城野』
寛政6(1794)年5月 大判錦絵
これも歌舞伎の役者さんの似顔絵です。
つり上がった眉に小さい目、大きな鼻などを極端にデフォルメしています。
地味な衣装だし、脇役なのかなと勝手に想像していますが、それでもそのキャラクターが伝わってくるような面白い絵ですよね~。
さりげなく、手の感じが女性らしくて、きっと優しい人柄なんだろうな。
銀色の背景に、この渋い着物と帯も素敵だわ。
美人画もたくさんありました。芸者や遊女を描いたものが充実していました。当時、芸者や遊女以外は、浮世絵にその人物の名前を書いてはいけなかったそうです。だけど、浅草の水茶屋の看板娘「難波のおきた」さんや両国の水茶屋看板娘「おひさ」さんは、その似顔絵が描かれ、その浮世絵作品に密かに名前が記されていたとのことです。解説にありましたが、「おきた」さんと「おひさ」さんはよく比較されるそうです。当時、この看板娘目当てに、水茶屋に訪れた人々がたくさんいたんだろうな~!
『難波屋おきた』
寛政5(1793)年頃
大判錦絵
『江戸高名美人
「高しまおひさ」』
寛政4-5(1792-93)年
間判錦絵
解説には、右のおひささんが15歳、左のおきたさんが16歳とありました。
おひささんの絵には名前「高しまおひさ」が絵の左上にありますが、名前を書くことが禁止されたため、左のおきたさんの絵には絵の左上に描いてある絵が名前を推測する「判じ絵」になっているそうです。
どちらがきれいかな~。
喜多川歌麿 『当世踊子揃 鷺娘』
寛政5-6(1793-94)年頃 大判錦絵
頭にかぶっている花笠がきれいですよねぇ。
この花笠の部分が透かしの版画技術です。
薄い黄緑っぽい色で透かしが入っていました。
淡い桃色の桜の花もたくさんついているし、今の時期にピッタリです。
こうした、浮世絵の透かしの技術や細かい緻密な線などは、目を見張るものがありました。
でも、そんな技術も素晴らしかったけど、そこに描かれる江戸の人々の生活が垣間見えるのがとても楽しかったです。
どういう意味があったまでは解説になかったと思いますが、その他当時の人々の風俗が見れたのがよかったな~。
この美術展は、本日4月17日をもって東京展は開催が終了しましたが、その後、千葉市美術館で4月26日から開催される予定です。また、浮世絵展としては、5月1日から東京国立博物館にて、写楽展が開催されます。
こちらも行こうかな~只今検討中です。