リフレッシュの時間

自分の思いつくままに、好きなことを書いています

『アーティスト』

モノクロのサイレント映画ということで、チャップリンの時代の映画なんて今まで一度も見たことないし、どんなものかと一抹の不安を抱きながら観はじめたけど、すごくいい映画だった。私としては、2012年アカデミー賞ノミネートされていた歌いまくりの最新の『レ・ミゼラブル』より100倍ぐらいよかったです。
 
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原題:THE ARTIST  製作年度:2011年 製作国:フランス 上映時間:101分
監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス   
出演:ジャン・デュジャルダンベレニス・ベジョジョン・グッドマンジェームズ・クロムウェルペネロープ・アン・ミラー
 
最後まで白黒ですが、カラーに慣れてしまっているため初めこそ色彩面での物足りなさは感じましたが、途中からは全く気になりません。音声も聞こえないし、いちいち俳優がセリフを言った後にそのセリフが後から画面が切り替わって文字のみの画面に浮かび上がるのも、そのうち慣れました。
 
すると、逆に、映画のストーリーの在る場面で、たまに聴こえる音声(コップを机に置く音など)が聴こえたときに新鮮さを感じ、なにか事件が起こるのではというワクワク感が生じます。
なによりも、この映画の素晴らしいところは、カット、演出面だと思う。色彩は無味乾燥、音声なし、ということで、視覚聴覚に訴える刺激がほぼ皆無のためか、場面の切り取り方や撮り方へのディテールに工夫が凝らされていて、見ていてうなりました。もちろん、ストーリーもよくて、この主人公―サイレント時代の花形俳優―の半生をここまで感慨深く楽しめて見れたのは、このサイレント映画からトーキー映画へと移る時代への変化と、この映画作品の無声から徐々に音声ありへと変わっていくのが、彼の半生というストーリーに調和しているからだと思う。
 
最後のダンスシーンなんてとってもよかったし、何度も見たかった。無声映画に慣れた最後に耳にする音声、快感ですね。爽快でスッキリして、見終わった後の後味がよかったです。そしてキーマンならぬキードッグのワンちゃんがまたこの映画のスパイスになってましたね。
 
まさかサイレント白黒映画でここまで感動を味わうことができるなんて、思いもしませんでした。なにしろ文明は進化して、2Dの世界から飛び出して今や3Dが主流となってきている映画産業なのに、敢えてその逆を行き、単に「昔のスタイルも味わい深いよね」ではなく、「サイレント白黒映画でも十分に楽しいやん」と思わせたのは凄いと思う。いいものは、いいね。この映画、一見の価値ありです。