リフレッシュの時間

自分の思いつくままに、好きなことを書いています

2010年11月 ゴッホ展 その3

ゴッホその1その2 のつづきです。
 
第Ⅴ章は、1888年2月からのアルルでの作品です。
それまでにゴッホが吸収してきたものの集大成がこの地で花開いたということです。
 
この章に入ってすぐに、ゴッホの部屋の再現VTRと、再現した実物大の部屋がありました。この絵の部屋です。
 
イメージ 1
 
フィンセント・ファン・ゴッホ  『アルルの寝室』
1888年 ファン・ゴッホ美術館 蔵 油彩/カンヴァス
 
実物大のこの部屋は、本当にこの絵そのまま。椅子の場所も地味にベッドの奥にかけてある服や帽子なんかも全く同じです。芸が細かいなぁ、と感心しました。でも、ゴッホが住んでた実際の部屋はこんなにカラフルではなかったんじゃないかなぁと思います。きっともっと地味で質素な色のこの部屋で、ゴッホが朝起きたり、考え事したりしているのを空想しました。
 
この絵は前に見たことある!と思ったら、この絵を模写したのが2枚あって、うち1枚がオルセーにあるそうです。
私が前に見たのはきっとオルセー美術館のですね。ゴッホ美術館にあるこの絵が初めの1枚で、その後この絵がアルルを襲った大洪水による湿気で傷んだので修復しようとしたが、弟のテオが、修復によって絵の雰囲気が変わるのを心配して、模写を勧めたそうです。
 
買ってきた図録の解説を読んでみると、この絵はかなり褪色してしまったようです。
壁の色はうす紫で、床は赤、シーツと枕は明るい黄緑・・・だったそう。この色合いだと大分印象変わりますよね。
 

この第Ⅴ章は、印象に残る作品がいくつもありました。その一つがこれ。
 
『種をまく人』  1888年
ファン・ゴッホ美術館 蔵
油彩・カンヴァス
 
この絵のこの「種をまく人」の存在感が非常に強かったです。手から種が落ちていて、別に力強い動作をしているわけじゃないのに、力強く印象に残りました。
 
後ろが夕焼けらしいのですが、こんな黄緑の空の夕焼けもインパクト強いです。太陽もなんかギラギラしてるよね。
 
それからこの木。作品の横にある解説によると、浮世絵の影響がこの木に表れているとのこと。
そう言えば、琳派の屏風に出てくるあの梅の木に似ているではないですか。そう見えてきたらもう花が梅のように見えてきて、不思議な絵に思えてきました。この絵、もう一回観たいなぁ。図録見たら、「種をまく人」の手がなんだか温かい手で、実物の絵を見ている時は気づかなかったです。
 
他にもたくさん紹介したいところですが、記事が終わらなくなりそうなのでまた別の機会にします。
 

最後の第Ⅵ章は、ゴッホが入った病院のあるサン=レミとその後のオーヴェール=シュル=オワーズでの作品でした。病院の敷地内の風景や渓谷など、自然を描いた作品が多かったです。
 
でもやっぱり圧倒的存在感を放っていたのは、この作品でした。
 
イメージ 3
1890年 ファン・ゴッホ美術館 蔵  油彩/カンヴァス
 
初めはこの作品を見て、背景と補色の関係になってて色鮮やかなアイリスだなぁ!と思っていたのですが、眺めていると、右下にしおれて折れてしまっている部分もあり、よく見ると花の端が茶色に朽ちていて、なんか悲しくなってきました。この地でゴッホの命が尽きることとダブって見えてきました。
枯れてきているのに、それでもなお輝きを放っているなんてね。ゴッホの生命力の表れですよね。
 

この美術展の途中で、非常に(!)簡単にゴッホの人生をまとめたVTRを流したスペースがあったのですが、そのVTRが、平井堅の歌声とともに、鑑賞者の人々の心にゴッホの人生の切なさを訴えかけてくるものでした。
なんかなぁ~感情に積極的に訴えかけてくる作り、どうなんだろう。私はすぐ感情移入してしまいそうになるので、なんとかそれを止めました。
絵を見ることはその画家の人生を見ることとほぼイコールかもしれないけど、あまりに画家の人生ばかりにスポットを当てると、その絵自体を他の画家の絵と比較できなくなってくるような気もする・・・けど、考えすぎかな。
 
なんにせよ、今回のゴッホ展は、今まで観たことのないゴッホの作品ばかりで良かったです。
でも、本当に見てみたいファン・ゴッホ美術館所蔵の有名な作品とかは来てなかったです。これは現地に来なさいってことですね。まあ、オランダのゴッホ美術館巡りは将来の夢に挙げておきます。
(完)