リフレッシュの時間

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“官僚たちの夏”/城山三郎 著

先日最終回を迎えたTVドラマの“官僚たちの夏”、9月からの2話は見れたのですが、
慌ただしくしていた7月下旬から8月いっぱいが見れなくて残念だったので、原作の文庫本を読みました。

イメージ 1官僚たちの夏
著者:城山三郎
発売日:1980/11/27
出版社:新潮社












原作は、主人公の風越信吾像がTVドラマで描かれている像とまるで違っていました。
その他の登場人物はだいたい同じような人物像だったと思います。

原作での主人公は、型破りで、銀行の頭取や通産省長官などどんな地位の人に対しても平等に(?)
高圧的な態度でふるまっていて、いわゆる官僚とは全く違う人柄です。

ドラマでは、人の意見も聞き入れ現場にも足繁く通う好感持てる人物像ですがまるで逆です。
今となっては、そもそもこの風越信吾を佐藤浩市さんが演じているあたりから、
ドラマ制作者側の意図が伝わってきますね。

原作での風越は、頑として自分の考えを曲げず、また自分の考えに共感しない者を受け入れない性格で、
しかし、日本の産業界を思う気持ちだけは人一倍熱い人間です。

原作では主に、風越の人物像と、その人物が通産省でどう働いていったかが描かれているのですが、
個人的に特に印象に残った風越の行動は、

1.「人事の風越」と言われ、常に省内の人間の名前が書いた札を置いて人材配置を考えている。
  キャリア、ノンキャリア問わず、有能な人物を積極的に登用しようとした。

2.必ず1日に1回ランニングシャツ1枚になって、職場の自分の席のところで大きくのびのびと体操をする。

3.知り合いに会えば、誰彼かまわず、「おうっ!」と挨拶し、いつも背を反らして大股で歩いている。

この人物像だけでも、佐藤浩市さんのイメージ?というのがおわかりいただけるでしょうか。
では、誰がこのイメージに合うかなぁと考えてみると、
大柄で、口が悪くて、粗雑な人間なので、やっぱりなかなか見当たらないです。
朝青龍とか?(←別に、朝青龍のこと嫌いじゃないですが、なんとなくです。)


原作の話の流れとしては、国内産業を守ろうと必死の風越派の立場が、時代の流れとともに
通産省のなかで変遷していく様子が、うまく表現されていました。

初めから国際派で風越派と対立している官僚たち(玉木や片山)にも共感できました。
それ以上に、国際派でも風越派でない官僚たちの空気を読む力に感心しました。(←若干嫌味です。)
風越派が省内で強い権力を持てなくなってきたのを読み、それまで慕っていた風越から
当たり障りなく、上手に離れていく術は、さすがです。
私はその術を身につけてないので、少しは学んだほうがいいのかも。

一方の風越は、空気を読む力なんてたぶんほとんどなくて、周りの自分に対する感情にも無頓着で、
お節介ともわからずに自分の意見をガンガン言っていく姿は、上記の空気を読む官僚たちと対照的でした。

最後に、この原作を読んで、
コツコツ努力し続けたからといって必ず報われるわけでもないし、
かえってそれを人から利用されてしまい、努力している張本人は過労で倒れたり死んでしまう場合もある、
という、今の世の中にも通じるつらい現実を突きつけられました。
「現実は甘くないなぁ」と、感じさせられました。
この現実を目の当たりにして自分はどう動くか、それを考えさせられる機会をもらった気がします。

いずれにせよ、この作品は、ハッピーエンドではないですね。熱くも哀しい官僚たちの話です。