リフレッシュの時間

自分の思いつくままに、好きなことを書いています

『トレーニング デイ』

イメージ 1


原題:TRAINING DAY  製作年度:2001年  製作国:アメリカ 上映時間:122分
監督:アントワーン・フークア  脚本:デヴィッド・エアー
出演:デンゼル・ワシントンイーサン・ホーク、スコット・グレン、エヴァ・メンデス
    シャーロット・アヤナ、トム・ベレンジャースヌープ・ドッグドクター・ドレーメイシー・グレイ

随分前からイーサン・ホークが好きだったのにここ最近見ていなかったので、イーサン・ホーク出演の作品を数本借りてきた。そのうちの1本がこちら。『トレーニング デイ』です。

デンゼル・ワシントンイーサン・ホークがコンビの警察ものと聞いて期待はしていたが、その期待をはるかに上回った、スリリングで面白いサスペンスだった。

【作品内容】
この作品は、ロス市警の麻薬取締課に配属された新米刑事ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)と、その上司にあたる型破りなベテラン刑事のアロンゾ(デンゼル・ワシントン)の“トレーニングデイ”(訓練日)の一日を描いた作品である。

このアロンゾという刑事が、外見もギャングそのもので、法を無視したギャングまがいの方法で、ジャングルと呼ばれる無法地帯を取り仕切っている(つもりでいる)。

ジェイクは、警官になった動機が犯罪者を刑務所に入れて市民を守るためという正義感の強い人間。
そのため、市民を脅してドラッグや金を没収するアロンゾのやり方には納得が行かない。

アロンゾの論理は、「ドラッグの売人の下っ端の逮捕は、そこらの警官に任せておけばよい。麻薬取締課は、その組織の核となる重要人物の逮捕であり、そのためには手段は厭わない。」おまけに「我々は、羊を食う狼を、狼になって捕えるのだ。」と言う。



上司の命令であり、さらにはその上司が昇進などの甘い言葉を投げかけ自分を説得するから、我慢して自分の信念に背く行為に従ってきたものの、ついにその我慢の限界が来た。

アロンゾは、自身のミスでロシア人から追われている件の手切れ金として必要な資金を調達するために、なんと、アロンゾがつい数時間前にはまるで良き親友かのように振舞っていたロジャーの家に嘘の捜査令状(数百万ドルを渡して発行させたもの)で押し入り、ロジャーの貯めたお金を奪ったのだった。さらには、ジェイクに「ロジャーを撃て」と言うのだ。

「できない」と言うジェイクに対し、アロンゾは躊躇なくロジャーを撃ち、周りの仲間と「ジェイクが撃った」と口裏合わせを工作する。

やっていないことを「やった」と証言しろと命令され、正義感の厚いジェイクはそれを拒否。すると、アロンゾはとんでもない行動に出た。あるギャングにジェイクを殺すよう依頼したのだった・・・。



【感想】
デンゼル・ワシントンと言えば、悪に立ち向かう正義の味方という役柄が多い気がするのだが、この作品のアロンゾ役は意外で、しかもそれに全く違和感なく熱演しているのが素晴らしかった。このアロンゾ役は、一つ間違えば最低な悪徳警官の役だが、デンゼル・ワシントンが演じたから彼の型破りなめちゃくちゃな手法や考え方に何か説得力が増したように思う。
特に、最後のシーンは、今まで犯した彼の罪を一斉に受けたように感じられる最期だった。

イーサン・ホークも、正義だけでは社会の諸悪の根源を潰せないというアロンゾの意見に耳を傾けつつも、やはり割り切れないもどかしさをうまく演じていたと思う。さらに新米刑事ということで、どこか慣れないぎこちなさや、そわそわした不安感が始終漂っていてよかった。

俳優陣の熱演に十分に満足したが、作品の内容も絶えず予想できない展開で、非常に楽しめた。

アロンゾは、『警官』という地位を武器にした非常に悪質なギャングのようなもので、逮捕しないで「助けてやっている」はずのギャングたちからもひそかに疎まれている。

アロンゾ自身は、このギャングの街にどっぷり浸かっているためか、その手法に全く良心の呵責もないし、正当防衛だとさえ言うが、一方で、正義感あふれるジェイクは、アロンゾのやり方はあまりに自己中心的に感じられる。

ギャングの街では、アロンゾの論理は妥当なのかもしれない。つまり、社会悪の根絶には、正義だけでは到底不可能であり、時には法を無視することも必要だということだ。
しかし、アロンゾのルールの破り方は酷く度を超えている。
『警官』だからギャングたちもアロンゾに手が出ないが、アロンゾへの敵意を強めているのもそのためだ。

一度はアロンゾの論理に耳を傾けたジェイクが「幻滅したよ」と言ったのは、そういった一連のアロンゾのやり方に嫌悪感を覚えたからだろう。

ジェイクが自分の命令通りに動かないかもしれないと疑念を持ったアロンゾのジェイクの殺害依頼も酷すぎる。

しかし、それをきっかけに、それまで正義感に溢れ殺人など犯すはずのない新米刑事が、人の命を屁とも思っていないアロンゾを殺そうと決心し、アロンゾを追いかけた執念は見ごたえがあった。

彼は、この一日で、死に直面するなど酷い目に遭い、それまでの価値観を大きく揺さぶられただろう。
しかし、彼は、最後まで自分の信念を曲げなかった。最後には自分の信念の正しさを確信したように思う。そういった『正義感』という視点からしても、この作品は非常に面白かった。