リフレッシュの時間

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“ヒラリー・スワンク IN レッド・ダスト”

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原題:RED DUST  製作年度:2004年 製作国:イギリス・南アフリカ 上映時間:110分
監督:トム・フーパー
出演:ヒラリー・スワンクキウェテル・イジョフォー、ジェイミー・バートレット、イアン・ロバーツ、
    ノムレ・ンコニエニ

観ました。かなりつらかったです。しかし、大変いい映画でした。



舞台は南アフリカ共和国アパルトヘイトが廃止され、マンデラ大統領が登場した時代です。

アパルトヘイト廃止後、市民戦争を避けるため
白人による黒人への圧政下で、拷問、殺人などを犯した者は、
民族和解委員会の聴聞会で真実を告白することで恩赦を受けることができた。

主に登場するのは、その酷い拷問を受けながらもなんとか生き延びることができたアレックス(キウェテル・イジョフォー)。その弁護士を務めるサラ(ヒラリー・スワンク)。
彼女もまた、アパルトヘイト下で黒人の男性と交際し、逮捕された経験の持ち主だった。
そして、アレックスを拷問した白人警官のヘンドリックス(ジェイミー・バートレット)。

アレックスが聴聞会を引き受けたのは、自分が受けた拷問に関する真実を暴くためではなく、
同志であるスティーブが突如行方不明になった件についての真実を暴くためだった。

その事件に関して、ヘンドリックスの上官であったムラーは、自分が逮捕されることを懸念し、
事前にヘンドリックスに自分の名前は一切伏せるように圧力をかけていた。

その時の、生々しい拷問の様子と、その記憶を辿りながら苦しむアレックスの様子を
交互に映し出しながら、真実を明らかにするための聴聞会が進行していく。



非常につらく苦しい映画でした。
私は殺し合い、戦争、暴力、拷問の様子を見るのが大変苦手ですが、
その中でも特に拷問については、まるで自分が受けているような気さえして
普段はほぼ見ることも聞くこともできません。
今回はそれを耐えて、見ました。生々しい証言も聞きました。吐き気を覚えるほど非常につらかったです。
その過去の記憶に苦悩するアレックスの姿も、見るのが苦しかったです。

アレックスが感じるように、私も、拷問をした白人警官のヘンドリックスに酷い嫌悪感を覚えました。
しかし、ヘンドリックスの主張もわかりました。

あのアパルトヘイトという悪しき政策が行われている下では、
真実を吐かせるための拷問も、上官からの命令ならば従わなければいけなかったこと。
そして、その上官であるムラーを初め他の警官であれば、もっと酷い拷問で簡単に殺していたこと。
現にムラーは簡単にスティーブの首の骨を折り、それが原因で死んでしまった。
拷問をしている側のヘンドリックスも精神的にまいっていたし、
そのヘンドリックスの様子に怯えて妻が離婚し家族が国外に逃げてしまったのもそういうわけだった。

だから、ヘンドリックスがアレックスに「俺はお前を救ったんだ」と言った言葉は、
傲慢なのではなく、それも真実なのだとわかりました。
アレックスもそれが真実であることを受け入れたのだと思います。

そして、本心なのか(私としては本心と信じたい)、
ヘンドリックスはアレックスに「すまなかった」と二度言って、詫びていました。

結果的にアレックスは聴聞会への請求を取り下げ、それによりヘンドリックスの恩赦申請は認められます。
そのことが、アレックスの命を救ったヘンドリックスへの「許し」となったということです。

非常に重くつらい作品ではあったのですが、
「許し」に尊さを感じさせる、それをテーマにしているところがこの映画の素晴らしい点だと思います。



俳優陣は、ヒラリー・スワンクの演技も安心して見れたし、キウェテル・イジョフォーもよかった。
個人的には、悪役であるジェイミー・バートレットという俳優の演技も非常に素晴らしかったと思います。



最後に、この映画の最後にあった心に残る言葉を引用し載せておきます。

 我らは瞳に宿った獣を直視し、許しを請い受けてきた。
 今 過去への扉を閉じよう。
 忘れるためではなく、我らを未来へと開放するために。
                                   ツツ大主教