リフレッシュの時間

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『救命士』

マーティン・スコセッシ監督とニコラス・ケイジがタッグを組んだ作品を見るのは、たぶんこれが初めてです。
 
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原題:BRINGING OUT THE DEAD  製作年度:1999年 製作国:アメリカ 上映時間:121分
監督:マーティン・スコセッシ  脚本:ポール・シュレイダー
出演:ニコラス・ケイジパトリシア・アークエットジョン・グッドマンヴィング・レイムス
    トム・サイズモアマーク・アンソニークリフ・カーティス、ネストール・セラノ、シンシア・ローマン
 
これは、コメディとヒューマンが入り混じった作品なんでしょうか。
 
1990年代のニューヨークを舞台に、ドラッグや暴力で腐敗しきった世界を描かれています。その秩序もないストレスフルなこの街で命を落としていく人々を救おうと救急車を日夜走らせる。しかし、どんなに誠心誠意を尽くしても救うことのできないこの街の荒んだ状態や人々を目の当たりにして、精神的に追いつめられていく救命士の主人公フランクをニコラス・ケイジが演じています。
 
フランクは、助けようとしたけど救えなかった18歳のローズという幻影にとりつかれているということで、フランクの目に映る、幽霊か幻覚がさまよっているこのニューヨークの街というのが、少しファンタジーのようにも感じられました。スコセッシ監督でファンタジーっぽい作品は初めてだな。
 
フランクの心理状態として最後はこうなるんだろうというのはおおよそ予測できたけど、そこに至るまでの、フランクと同じ職業の救命士たちの人柄がそれぞれ非常に個性的なのと、救急車を走らせる夜の街の悪夢のような光景、そして、街の住人の中で特にエキセントリックなノエルという男性の行動が、この街の混沌さを物語っていました。
 
救命士トムトム・サイズモアは暴力的で、この街の元凶だとしてノエルを殴る蹴るのめったうちにしていて、挙句には救急車もバットでボコボコにしていました。彼もまたこの街の闇にとりつかれ、そうでもしないと気がおかしくなってしまう、もしくは気がおかしくなってしまった一人ということなんだろうか。
 
一方で、救命士という仕事にやりがいを感じ、「命を救っている自分は最高だ!」と救急車を走らせることに目を輝かせているマーカスヴィング・レイムスという人物もいました。彼は、常にハイみたいだったし、それはそれでやっぱり変だったと思う。
 
でも、一番際立っていたクレイジーな人物はやっぱりノエルマーク・アンソニー。彼は、駐車してある車のフロントガラスなどを順番にバットで割っていったり、病院では「水をくれ、水をくれ」と叫び続け、やることなすことクレイジーでした。
 
フランクは、こんな人々に囲まれながらも、人の命を救うことだけを考え、次第にこの街にはびこる悪を嫌悪していったのだと思う。自分がどんなに人を救おうとしても、この街自体が悪いから、死んでいく人は減らない。むしろ増えていく一方。それで自分も滅入ってしまって、精神的に追い詰められていく。
 
その街の悪の部分を見せつけられる一方で、印象的なのは麻薬売人のサイクリフ・カーティスが、バルコニーの柵がおなかに突き刺さりながら、そして高層階から半ば落ちかけながらも、「この街が好きだー!」と叫んでいるシーン。柵を切る火花が、たまたま夜空にあがる花火とマッチして、その中でこう叫ぶ彼の姿は、ドラッグで頭がハイになっているのかもしれないけど、そういうことなんだろうなと変に納得した。
 
ニューヨークってさすがにこの映画で描いている程じゃないですよね?この状況はあまりに酷いです。
ニコラス・ケイジより、街の様子が異常過ぎて、支離滅裂な印象を受けた映画でした。