リフレッシュの時間

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『そして、私たちは愛に帰る』

ドイツに住むトルコ系移民の話です。この作品の監督ファティ・アキンさんもトルコ系移民だそうです。
ドイツに住むトルコ人、トルコで闘うクルド人・・・。なかなか考えさせられる映画でした。
 
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原題:AUF DER ANDEREN SEITE / THE EDGE OF HEAVEN
製作年度:2007年 製作国:ドイツ・トルコ・イタリア 上映時間:122分
監督・脚本:ファティ・アキン
出演:バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、ハンナ・シグラ
    ヌルセル・キョセ、パトリシア・ジオクロースカ
 
【あらすじ】  ネタばれなし
アリ(トゥンジェル・クルティズ)は、ドイツ・ハンブルク大学のドイツ語文学教授のネジャット(バーキ・ダヴラクの父で、二人はトルコ系移民の親子。ある日、アリは、トルコ系の娼婦イェテル(ヌルセル・キョセ)に出会い、稼ぎを支払うから自分の妻になってほしいとお願いする。
 
イェテルは、大学に通う一人娘の学費を稼ぐために、娼婦の仕事をしていたのだったが、ちょうどその頃、街で見知らぬトルコ人の二人組に「お前はトルコ人だろ。イスラム教の教えに従って、街で立つのをやめろ。今度街で立っているお前を見たらただじゃおかないからな。」と脅されていた。
 
そのこともあって、イェテルはアリの妻になることを決意する。ところが、アリはある日突然、病に倒れ入院。
その後一悶着あり、アリとネジャットは決裂。
ネジャットは、イェテルの子どもの教育費を負担しようと、イェテルの娘を探しにイスタンブルへ向かう。
トルコの警察に、イェテルの娘の名のアイテンを告げると、「なぜ彼女を探しているのだ。」と尋問され、住所はおろか全く情報を得られない。警察の不可解な態度に違和感を覚えながらも、ネジャットは、イェテルの娘を探しながらしばらくイスタンブルに住むことを決心する。
 
一方、アイテン(ヌルギュル・イェシルチャイ)は、クルド人の立場の平等を訴えて、デモなど過激な活動を行う反政府組織の一員だった。そのアイテンは、自分の身の危険を感じ、母の住むドイツに不法入国する。
そこで、たまたまドイツ人女性ロッテ(パトリシア・ジオクロースカ)と知り合い親しくなるが、ロッテの母スザンヌハンナ・シグラは、過激な思想を持つアイテンのことを良く思っていなかった・・・。
 


【感想】
フランスにアルジェリア移民が多くて、ドイツにトルコ移民が多いのは知っていました。でも、トルコ移民の視点から見たドイツでの生活のことなんて考えたこともなかったし、考えてみると、トルコはイスラム教で、ドイツはキリスト教。そういうことすら意識せずにこの映画を見始めました。
 
こう書くと、イスラム教対キリスト教の話かと思われるかもしれないけど、この映画は、宗教問題を取り上げた作品ではありません。クルド人などの国際問題に触れつつ、親子間の愛情、そして、人種を超えた「愛」という感情を描いた作品でした。
 
人種や民族問題って、島国で移民もそれほど多くない日本に住んでいるとついつい疎くなってしまう問題だけど、世界では至る所で紛争の原因になっている重要な問題だと思います。この映画は、そういう問題について、人種・民族間の戦いを通してではなく、彼らの生活や大切なものの「死」を通して考えさせます。
そして、最終的には、相手を大切に思う気持ちが最も重要で、最も純粋なものだということを知らされます。
 
そういうわけで、カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞、そして、全キリスト協会賞を受賞しているんでしょうね。
 
まあ、かなり真面目な作品ではあるけど、ところどころ面白い点もあって、トルコ人のネジャットはドイツの大学でドイツ文学を教えていて、そのことをイスタンブルでドイツ語本屋を営むドイツ人男性に「君に店を譲るのがピッタリだね」と言われていたりします。こういうことは、意外と、実際にあるのかもしれません。日本にも、日本人以上に日本文学が好きな外国人だっていますもんね。
 
それから、クルド人の問題。これは私は、高校時代に授業で少し触れて耳にしたことがあったぐらいで、実際にはどういう事情でどういう社会問題になっているのか、ほぼ知りません。この映画で分かったことは、クルド人の人たちはトルコ人の人たちに比べ、貧しく十分な教育が受けられず、その子どもたちは犯罪の温床になっているという現状です。私は、前にトルコに旅行に行ったことがあるのに、この問題は詳しく知りませんでした。こういう問題は、真面目にもっと知らないといけないなぁと思います。
 
この映画の登場人物のアイテンは、過激な行動で政府に反対活動をしていたけど、最後には決して過激な行動だけが政府を変える手段ではないと気づいたように思います。こういうのは難しいな。暴力行為で問題が解決されるはずがないけど、でも暴力行為なしで話をするだけで政府が耳を傾けるかと言ったら、それができていればそもそも過激な行動に出ないということですしね。とにかく、弱い者が泣き寝入りするような状態にはなってほしくないです。今まさに中東がカオスになっていますしね。本当に、日本も世界も一体これからどうなっていくんでしょうね。