リフレッシュの時間

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『フェイク』

アル・パチーノのマフィアものと言えば、『ゴッドファーザー』シリーズを思い浮かべますが、この映画でのアル・パチーノは、マフィア・ファミリーのドンではなくて、トップに昇れない下っ端の男レフティーです。
 
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原題:DONNIE BRASCO  製作年度:1997年 製作国:アメリカ 上映時間:126分
監督:マイク・ニューウェル 原作:ジョセフ・D・ピストーネ 脚本:ポール・アタナシオ
出演:アル・パチーノジョニー・デップマイケル・マドセン、ブルーノ・カービイ、ジェームズ・ルッソ、
    アン・ヘッシュジェリコ・イヴァネク、ロバート・ミアノ、ジェリー・ベッカー、ブライアン・タランティナ
 
【あらすじ】  実話を基にした話です。
時は1970年代後半。FBI捜査官ジョー・ピストージョニー・デップは、おとり捜査官としてニューヨークにあるマフィアの一ファミリーに潜入する。彼は、宝石商をしているドニー・ブラスコと自称し、ファミリーの下っ端レフティアル・パチーノに近づく。ドニーはレフティーに気に入られ、その後6年間もマフィアの一員として過ごした・・・。
 
初めは、FBIの職務を忠実に全うし、報告にも余念がなかったが、徐々にレフティーとの間には信頼関係が生まれ、同時に、ファミリー内での上下関係やファミリー間抗争に巻き込まれてゆく・・・。
 
一方で、ドニーことジョーは家庭を持つ一般人。全く家に帰らない夫に妻アン・ヘッシュは苛立ち、家庭は崩壊。
しかし、ジョーは、いつのまにか、自分の行動次第で自分の命だけでなくレフティーの命をも左右しかねない立場にあり、もはや後に引けない状態にあった。
 


【感想】
意外と面白かったです。
レフティーとドニーとの心理戦や、お互いの猜疑心を乗り越えて構築された信頼関係などが見応えありました。
 
特に最後のほうのシーンで、レフティーとドニーがFBIに捕まる船上のシーンでの、連れて行かれるドニーに向かって大声で叫ぶレフティーの様子には、胸がじわっとしました。そのときのドニーも、レフティーだけは助けたかったと見えて、「くそ!」といらついていました。その二人の様子がそれぞれ、自分のことより先に相手のことを思いやっていて、感動しました。
そもそもその船の作戦実行前に、ドニーがしきりにレフティーに「いま大金がここにあるから、逃げて落ち着いたまともな生活したらどうだ?」と言っていて、そこでの二人の会話が互いに相手を思う気持ちが表れていて、これも印象に残ったシーンの一つです。最後の最後までレフティーがドニーとの友情を信じていたのが良かった。
 
レフティーを演じているアル・パチーノが本当に良くって、ちょっとうさんくさそうな、しかし情に厚い庶民的な下っ端マフィアを好演しているんですよねぇ。アル・パチーノ、いいわ~~!!『ゴッドファーザー』のドンとしての苦悩している姿もよかったですが、このレフティー役も哀愁漂っていて、憎めなくて・・・。
 
ドニーも初めはFBI捜査官としての潜入だったが、次第に捜査官としてよりレフティーの気持ちに応えたいとか信頼を壊したくないという思いが勝っていったのは、まさにこのレフティーの人柄のためだと思います。
と言っても、人望あるというタイプでもなく、ファミリーのドンからも感謝はされているのに、大きな仕事は任されない=昇進も望めないという人間で、レフティー自身は常に次は自分が干されるんじゃないかと脅えながら過ごしています。あの時、ドニーの言葉に乗って作戦を放っぽり出してほしかったです。
 
ドニー役のジョニー・デップも好演していたと思います。おとり捜査の手柄で勲章と小切手をFBIから表彰を受けていましたが、それを受け取った時の眼差しなどが印象的でした。「終わったのよ」と奥さんが呼びかけますが、たぶん、友情やいろんなものを失って、さみしいような残念なような気持ちが募っていたんだと思います。
 
マフィアの世界って、義理人情や友情など、普通の世界では味わわないような濃密な人と人との関係があるのでしょうね。うまく説明できませんが、とても切ない思いが残る映画でした。