リフレッシュの時間

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『エレファント』

こないだ見た『ミルク』ガス・ヴァン・サント監督の映画『エレファント』を見ました。
以前アメリカで起きた衝撃的な事件、コロンバイン高校銃乱射事件を描いたものです。
 
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原題:ELEPHANT  製作年度:2003年 製作国:アメリカ 上映時間:81分
監督・脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:ジョン・ロビンソン、アレックス・フロスト、エリック・デューレン、
   イライアス・マッコネル、ジョーダン・テイラー、ティモシー・ボトムズ
 
【感想】
この事件はかなりショッキングでした。1999年4月20日に起きたコロラド州コロンバイン高校での事件です。
 
マイケル・ムーア監督もこの事件を題材にしたドキュメンタリー映画ボウリング・フォー・コロンバイン』を作っていて、それはその公開後比較的すぐに見ていたのですが、ガス・ヴァン・サント監督のこちらのほうはまだ観ていませんでした。もうあの事件から10年以上が経ち、事件の全貌も忘れかけていました。
 
マイケル・ムーア監督の映画では、ドキュメンタリーだけあって、「なぜこんな事件が起きたのか?」を直接的に追及していっていたのですが、ガス・ヴァン・サント監督はまた全く違った手法です。
まるで、その事件がまさに起きている状況を目撃者として見ているようでした。
事件が起きるまでのありふれた高校生同士の会話や友達関係・・・。
それが突如、銃を撃つ前のカチャという音で空気が一瞬張り詰め、直後次々と高校生が死んでいく・・・。
 
何が原因だったのか・・・?
 
まず、犯人の高校生2人は、銃をネット通販で購入していること。これには驚きです。
銃を購入するためにはその許可証などを提示しないといけないなどの制約はないんですね。
誰でも自由に持てるんですね。怖すぎます。「自分の身は自分で守る」の行き過ぎです。
 
それから、彼らはどうやら学校ではいじめられていた様子。
でも、「いじめられた、だから殺す」というほど単純なものでもなさそうです。
その背後には、虚無感のようなものが漂っています。彼らの思考には、親が不在のようだし。
だいたい、幼児じゃあるまいし、いじめられるから悪者を殺害しようなど、そこまで短絡的ではないでしょう。
彼らには、まだ高校生なんだけど、この世を憂いているようなそんな厭世的な感情があったんじゃないかな。
 
アルコール依存症の父を持ち、ろくに学校に来れなくて、事情の知らない校長先生に説教されるクラスメイトもいるのに・・・。この事件を起こしたのは、そんな青年ではなく、比較的恵まれた、しかし教室では、嫌がらせを受けていた二人の青年だったのでした。嫌がらせも授業中にクリームを投げられたり、というもので、殴る蹴るの暴行を受けているわけではありません。それに、同じ程度のいじめを受けている生徒は他にだっているのです。
 
いじめはよくないけど、世界中どこにでもあるものなんだと思う。
いじめるほうが悪いのは確かだけど、通常ならこんな事件は起きない。
この事件が起きたのは、やはり、銃が簡単に手に入る状況、コミュニケーション不足(誰にもヘルプを出せない環境、教師が一人一人の生徒の状況に気づかない環境など)、が大きいと思う。彼らの事件計画のうちに自分たちの自殺も入っていて、現に計画達成後に自殺したので、彼らには、大量殺害=悪という認識はあったのです。
 
「もう生きる意味がない」そういう精神状態が、「多くの道連れ」を作ったんだと思います。
この事件の後にアメリカ合衆国で起きたバージニア工科大学銃乱射事件でも、犯人は最後に自殺しました。
日本でも前に秋葉原で無差別殺人事件が起きましたよね。
決して、アメリカ合衆国のみで起きる特別な事件とは思えません。
やっぱり、今の社会の在り方を考えないといけないなぁと思います・・・。
(自分にできることって、将来の自分の子や自分の周辺などへのセンサーを敏感にするということなのかなぁ。)