リフレッシュの時間

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“おくりびと”

遺体を棺に納める『納棺師』という仕事を通して、自分を捨てた父についての葛藤を乗り越えていく話です。

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原題:おくりびと 製作年度:2008年 製作国:日本 上映時間:130分
監督:滝田洋二郎  脚本:小山薫堂  音楽:久石譲
出演:本木雅弘広末涼子山崎努余貴美子吉行和子笹野高史杉本哲太峰岸徹

アカデミー賞外国語映画賞を獲得して話題になりましたよね。
今更ですが、やっと観ました。確かにいい映画でした。本木雅弘もよかったけど、山﨑努もよかった。



主人公・小林大悟本木雅弘)は、チェロ奏者。
しかしオーケストラに入団するや否やオーケストラが解散してしまいます。
一文無しになってしまった小林は、妻・美香(広末涼子)を連れて故郷の山形へと帰ります。

小林は6歳の時に父が女性と浮気して出て行ってしまい、その後は母の手一つで育てられた過去を持つ。
その母も今は亡くなってしまい、住んでいた家だけが残されていたのでした。

ふと見た広告で、具体的な仕事内容も知らずに面接に臨むのですが、それは『納棺師』という職業でした。
その個人経営の会社社長(山﨑努)は、小林を見るなり「採用する」と言います。「給料は月50万円。」
遺体さえ見たことのない小林は、『納棺師』の仕事が自分にできるのか不安に思ったが、
社長の小林に有無を言わせない雰囲気に呑まれ、また、面接だけで2万円手渡されたこともあってか
とりあえず承知してしまいます。

初めての仕事は、死後2週間経ったおばあさんの遺体で、腐っていて「初めてにしては刺激が強すぎ」で、
初めのうちは、この仕事について「いったい自分は何を試されているのだろう?」
「母親の死に目にあえなかったことの罰なのか?」と自問自答し、この仕事への不安だけが頭をよぎります。
しかし、その後、社長に付き添って『納棺』の社長の見事な手さばきを眺めるうちに、
この仕事に対して徐々に興味を抱き始めます。

事実、社長の『納棺』の手さばきは、亡くなった人に対して最後の愛情を注ぐかのような優しい手つきで、
かつ、どの動きにも無駄はなく、美しささえ感じるほどでした・・・。

こうして、小林は次第に死者を新たな旅立ちへと送り出すこの『納棺』という仕事の素晴らしさを理解し始めます。
ところが、妻・美香にはこの仕事をしていることを隠し続けたままだったのですが、
あるときそれを知られてしまい、美香には夫が『納棺師』という仕事に執着する意味が分からず、
「こんな恥ずかしい仕事辞めて!」「汚らわしい!私に触れないで!!」と叫び、実家へと帰ってしまいます。

妻もいなくなり、それでも、時にチェロを弾いたりしながら『納棺師』として生活し続ける小林・・・。

この後、小林はどうなっていくのでしょう・・・。



伏線として、小林の父への思いが随所に現れるのですが、
それが最後の場面につながって、感動的な仕上がりになっています。
小林が途中でした自問自答「なぜ?」の答えがここにあったのか、と納得しました。
そう考えると、この映画はよくできていると思います。

おまけに、単なる真面目腐った作品ではなく、葬儀でのハプニングなどユーモアもあります。

遺体と言ってもすべてがご老人の遺体ではなく、子どももいるし不良もいるし、性同一性障害の子もいるし、
一人一人異なったそれぞれの人生があるという当たり前の事実を再認識しました。

山形の風景もとてもきれいでした。いろんな場面で登場したあの山は何と言うんでしょうか。
山形にまだ行ったことがないのですが、一度行ってみたいなぁと思いました。

そして、チェロを演奏していた時によく弾いていた曲が、作品全体を通して流れているのですが、
この曲もとても心地良かったです♪ クラシックなのかな、と思いきや、久石譲さんの作った曲だそうです。

本木雅弘も好演していて、チェロ奏者としても『納棺師』としても見事だったと思うし、
場面場面の演技もどれもとてもよかったと思います。
その道のプロである社長・山﨑努の『納棺師』としての腕前も人柄も良かった!
(個人的には、本木雅弘より山﨑努のほうが演技力や存在感などが断然あったと思いました。)
余貴美子の、会社の個性的な事務員という役柄も印象的でした。
いまいち腑に落ちないのは、広末涼子の演技くらいです。広末涼子は演技うまいんですか?
どれもこれも浅い演技にしか見えなくて、もっと他にふさわしい女優がいたんじゃないかと思ってしまいました。

最後に、
笹野高史が演じる火葬場のオジサンが、山形弁で「この仕事をしていると、死というのは『 門 』に思える。」
という言葉、オジサンが言う「(次の世で)また会おう」というセリフに大いに共感しました。