リフレッシュの時間

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“ボーイズ・ドント・クライ”

性同一性障害の「彼」を巡る悲惨な事件とそこに潜む社会問題をストレートに描いた衝撃的な作品でした。

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原題:Boys Don't Cry 製作年度:1999年 製作国:アメリカ 上映時間:119分
監督:キンバリー・ピアース
出演:ヒラリー・スワンククロエ・セヴィニーピーター・サースガード、ブレンダン・セクストン・Ⅲ

“ミリオンダラー・ベイビー”ヒラリー・スワンクつながりで観ましたが、衝撃的な結末で言葉を失いました。
実話というので、さらにショックを受けています。



主人公は、ヒラリー・スワンク演じるブランドン。
本名はティーナ・ブランドンといい、性別は女性とされているが、
性同一性障害のため男性の心を持ち、外見も男性っぽくしている。
生まれはネブラスカ州リンカーン。従姉はやさしいオカマのロニー。
ひょんなことで、ジョン(ピーター・サースガード)とトム(ブレンダン・セクストン・Ⅲ)と出会い、
彼らの住んでいるネブラスカ州フォールズ・シティに行くこととなる。
そこでの生活は、荒んではいるもののそれなりに楽しくもあった。
そして、ジョンらの仲間であるラナ(クロエ・セヴィニー)とも知り合い、彼女と恋に落ちてしまう。

ところが、このフォールズ・シティは、保守的で同性愛者に対する偏見が根強い町。
男装していたブランドンが、性同一性障害であることを告白し、理解を求めても
それに応えてくれるような人々が集まっている町ではなかった・・・。



この作品の中で最も衝撃を受けた点。

ジョン、トム、ラナ、キャンディスらの荒んだ生活。
何にも希望を見出せないし見出そうともしない、ただ時だけが流れ、そして、ひたすら煙草を吸いビールを飲む。
ちょっとのことで「キレて」、簡単に人をも殺してしまいそうな精神状態だが、ナイフで自分に傷をつけて自制する。
シンナーを吸っては公園の遊具で回り続けたり、今の生活に不満はあっても積極的に抜け出そうとはしない。
特に、ジョンとトムの残虐で身勝手な行為には、酷い嫌悪感を抱きます。

この生活と彼らの精神状態にかなりの衝撃を受けました。
その後起こる悲惨な事件についても、すべてはこの精神状態から生じていると思います。
「保守的な町だから事件が起きた」ということではなく、
この偏見の強い町でこんな精神状態だからこそ起きたということです。

ショックで言葉が出ません。



良かったこととして印象的だった点。

ラナとブランドンの恋。ラナは同性愛者ではなく、ブランドンのことを男性として好きになりますが、
その後ブランドンの真実を知った後も変わらず「彼」を愛し続けます。
本当にその人を愛しているときは、相手の外見が取り除かれて内面しか見えなくなるということですね。
ラナはブランドンの性別を超えて「彼」を愛し、また「彼」も彼女を愛し続けました。
これについては、この作品の中で唯一感動できるプラスの出来事だと思います。

その意味で、今まで性同一性障害を隠して恋愛をしてきたブランドンにとっては、最高の恋だと思います。



性同一性障害という難しく繊細な役柄を、ヒラリー・スワンクが迫真の演技で演じていて、やっぱりヒラリーは凄いと思いました。ヒラリー・スワンクだからこそその役柄にリアル感が生まれたんだろうし、
そのおかげでこんな衝撃的な映画になったのでしょうね。

クロエ・セヴェニーも良かったです。
荒れ果てた環境にどっぷり浸かりながらも、心の中にわずかな希望を持つ女性ラナ役を好演していました。

そして、残虐で卑劣なジョン役をピーター・サースガードが演じていましたが、彼もやっぱりさすがの演技派です。
あんなに最低の人間なのに完全には恨みきれない、ジョンの持つ人間の弱さが伝わってきました。

実際の事件が起きたのは1993年というのだから、まだ16年しか経ってないですよね。
性同一性障害」という先天性の障害があったがために殺されてしまうというのは、あまりに残酷で
そういう社会のあり方を考えさせられます。