リフレッシュの時間

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“アメリカを売った男”

主人公兼悪役のクリス・クーパー熱演の、実話に基づくFBI捜査官の話です。

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原題:BREACH 製作年度:2007年 製作国:アメリカ 上映時間:110分
監督:ビリー・レイ
出演:クリス・クーパーライアン・フィリップローラ・リニーデニス・ヘイスバート

見ました!大好きなローラ・リニークリス・クーパーが出演しているこの作品。
クリス・クーパーは悪役だったんですね。確かに邦題と彼が主演であることを考えると当然なのですが・・・。
クリス・クーパーが好きなだけに、彼が追い詰められていく様子を見ているのが苦しかったです。


この作品は、実話に基づくもので、22年にもわたり国家機密情報を旧ソ連KBGに売り続けていた
FBI捜査官ロバート・ハンセンの逮捕までを描いた話です。

さすが、主人公ロバート・ハンセンを演じるクリス・クーパーの演技が光っていました。
ローラ・リニーは、ロバート・ハンセンを追い詰める部署の捜査官ケイトを演じています。
ライアン・フィリップは、名目上はロバートの補佐として働き、
実際にはロバートを調査する目的で配置させられた若手FBI職員オニールを演じています。

この作品は、ロバート・ハンセンの犯罪について描かれているのではなく、
あくまでロバート・ハンセンとその周りの人物の心理描写に主眼が置かれているものでした。
そのため、俳優の演技が命だと思うのですが、そこをクリス・クーパーの熱演で見事に仕上がっていました。

見どころとしては、国家機密を売ったという重罪を犯しているロバート・ハンセンの考え方が、
家庭を愛することを第一に置いているということ、そして信仰を持ち、敬虔なクリスチャンであること。
ロバートの調査をしているオニールはそんな彼の人間味に触れて、徐々に彼を尊敬していきます。

オニールと同じように、私自身も話が進むにつれ彼に親しみを感じ、そのためか彼が逮捕されたときには、心にポッカリ穴が空いたような気分になって涙さえ出てきましたよ。

それまで仕事の鬼で捜査官になることを誰より望んでいたオニールが、ロバート逮捕の時には、その手柄として提示された捜査官昇進を捨てて辞職するのですが、それはロバートの影響もあったかと思います。

一方のケイトは、家族もおらず仕事のため「猫も飼っていない」仕事一辺倒の生活で、
そんな生活を見たオニールが彼女に「(そこまでして)やりがいはある?」と尋ねたのが印象的でした。
彼女は、「彼が逮捕されてから質問してちょうだい。」とかわしていました。

決して楽しい仕事ではなく、人を追い詰めて、また追い詰められるようなことをしてしまうような
偏狭な組織・世界で、そこに明るさなんて微塵もないですよね。


また、自分の車にGPS発信器をつけられるなど、FBI自体が自分を捜査対象にしていることに
薄々気づいていたロバート・ハンセンが、いよいよ精神的に追い詰められて、自分の補佐のオニールに
「おまえを信じてもよいのか?!」と何度も質問していた場面も見どころの一つです。
クリス・クーパーの迫真の演技で、圧倒されました。
オニールは最後まで補佐官の芝居をしていましたが、私だったらこっちが気が狂いそうですよ。


面白かったのは、FBI組織の中の旧体制なところで、新しいPCが必要な時もまず申請書、他の機関に電話するときはその上官を通してからでないと電話できない、などの非合理的な規則が多数あるところです。

合理性が最優先とされていると思っていたアメリカでも日本の古臭い企業と同じなんだなぁ、と思いましたよ。
この旧体制については、ロバートは馬鹿らしいと感じていて、オニールに不満を言っていました。
「そこで何も思わないのが、おまえは役人だな」とオニールに批判を言っている場面もあり、笑えました。

ローラ・リニーは、笑うこともなく、話している時もほとんど口を動かさずにしゃべるようなクールな役どころで、
優秀な捜査官役だから仕方がないし、もちろんローラ・リニーの演技に文句はないけど、
個人的には、彼女の笑顔が好きだからちょっと残念に思いました。

次は、クリス・クーパーに、悪役じゃない主演の映画に出てほしいです!