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“ソニー (原題:SONNY)”

ニコラス・ケイジ初監督作品ソニーを観ました!

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原題:Sonny 製作年:2002年 製作国:アメリカ 上映時間:110分
監督:ニコラス・ケイジ 
出演:ジェームズ・フランコ、ブレンダ・ブレシン、ハリー・ディーン・スタントンミーナ・スヴァーリ
   ニコラス・ケイジ

これは、男娼として育てられた「ソニー」(ジェームズ・ブランコ)のお話ですが、なかなかいい作品でした。
人の心の繊細な部分をうま~~く描いた映画です。

私の大好きな“アメリカン・ビューティ”に出ていたミーナ・スヴァーリも出ています。
監督のニコラス・ケイジは、端役でちょこっとだけ出ていましたよ。それもとっても変な役。

「男娼」って、娼婦の逆で、女性を相手に売春する仕事をしている人をそう呼ぶようですが、確かに、
このジェームス・フランコという俳優は(初めて拝見しましたが)美男子(?)で、役にピタリとはまっていました。
やっぱり、女性にもてやすいかどうかは、その甘いソフトなしゃべり方も多少は影響するんでしょうね。
ソニーはソフトなしゃべり方と、とってつけたような笑顔(でも、わざとらしくもない)が特徴的でした。
それから、目・眼差しも、「やさしい」と「かなしい」を両方持ち合わせていて、印象的でした。


この映画は男娼をテーマにしていますが、露骨ないやらしい場面がほとんどなく好感が持てます。
主人公の内面にスポットを当てています。扱っているテーマの割に品がいいですね。(ソニーの母を除く。)


あらすじを簡単に。

舞台は、1981年、ニューオーリンズです。ソニーが軍隊から実家に帰ってくる場面から始まります。
ソニーを出迎える母(ブレンダ・ブレシン)は、かなり柄の悪い女性で、
ソニーが帰ってくるなり「生計を立てるために(男娼の)仕事を再開しろ」と詰め寄ります。

そうです、ソニーは、この母親に男娼として育てられ、生まれたときから「この世界」で暮らしてきたのです。
母親も昔は娼婦でしたが、今やオバサンになっており仕事ができないため、
どこかから連れてきた若いキャロル(ミーナ・スヴァーリ)に稼がせ、
加えてソニーにも稼がせようとしているわけです。

彼らは、売春ではなく普通の仕事をしている人たちの世界を「堅気」と呼び、
「自分たちは堅気にはなれない」「堅気になれたらそれは大変な快挙だ」などと言っています。

この時点で、自分の子どもを「男娼として育てた」母親に対して信じられない思いでいっぱいですが、
それは私が「堅気」の世界の住人だからそう感じるのかなぁ・・・複雑な心境です。

でも、もちろん、ソニーもキャロルも、この仕事を好きでやっているわけではなく、
「他に仕事がないから」「他に道がないから」と、やむを得ずやっているのです。
特にソニーにいたっては、その世界で『伝説のソニー』として有名になりすぎて
「みなが自分の生い立ちを知っていて、誰も自分を雇ってくれない」というわけなのです。

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ソニーの心の動きは、繊細で、一度は「堅気」の世界に足を踏み入れようと挑戦し、
でも、なんでもないことに過敏に反応して、被害妄想に駆られ、見ていて居たたまれないです。

キャロルは、もともとは娼婦じゃなかったからか、ソニーよりはずっとたくましくて、
弱気なりながらも自分のために正しいと思う方向に進んでいきます。


全体として、印象に残ったのは、
ソニーの、妙に冷めた(世慣れした)、飄々とした性格です。
やり切れない思いで感情が昂ぶって頻繁に攻撃的・感情的になったりする反面、
人に対して、どこか冷たいような、自分を押し殺すというか心の中で割り切るというのか、
言葉で伝えるのは難しいところですが、その性格が場面の随所に見え隠れして、大変印象に残りました。

男娼という仕事をしてきたからなのか、あんな母親に育てられたからなのか、原因はわかりませんが。


しかし、その心理描写という点で、この映画は観てよかったと思います。
ニコラス・ケイジは、演技派の俳優だけあって、そういう微妙な心の動きを描写するのがうまいのだと思います。